本を閉じて、煙草の煙が少し開いた窓の外にゆれながら流れてゆくのを、空虚な風とともに見つめていると、いつも、部屋が寒くなるから窓を閉めてというあなたの声を思い出します。でも、その顔はすでに朧げであり、美しい顔なのはわかっているのですが記憶が曖昧になって、はっきりと思い出せません。

覚えているのは、何気ない瞬間ばかりで実体が掴めないもどかしさがあります。

こういうのを未練というか、男らしくないと世間は言うのかもしれないけれど、ひとりの部屋で過去の記憶を辿る旅はとても穏やかな気持ちになるのと、ちょっとした謎解きのようでもあり、現実の時が止まって、もう一つの過去の時間が動きだしたりします。表現は違うかもしれないけれど、まぁ、そんな感じです。

ずっと家に引きこもることが多い最近は、また好きな本を読み漁るような生活をしています。本を読むっていいですよね? ずっと昔に付き合っていた彼女と短編小説を書いて交換してたりしてました。もちろん幼稚な文章だったりするんだけど、好きな人が書いた小説って読みたいじゃないですか。暗号のように紐解けば長いラブレターみたいな感じでもあったりするので、読むのが楽しいのです。きっと世間様には見せれたものではないでしょう。そうやって埋もれていった私小説もたくさんあるんだろうなぁ。なんて、考えるのも楽しいです。

なんだか、今日はつまらない話をしてしまいました。

夜中の遠くから聞こえる車が通り過ぎる音がなぜか好きです。きっと孤独や無音の闇というものが怖いのでしょう。

あなたも、孤独と闇に覆われることなく過ごしてることを願っています。生きてることは素晴らしい時間ですから、おおらかな気持ちで楽しんでほしいと思います。

また。手紙を書きますね。 今日も空を見つめてください。

きっと、気持ちが晴れると思います。