雪の降らない場所で生まれて育った君を、私の故郷に連れて行った時。溶け残った決して綺麗じゃない道路脇に積まれた雪をわざわざ踏みに行った姿を見て。「私たちはとても遠くで育って、こんな風に逢えて、一緒にいるのは奇跡みたいだな」と思ったのでした。

口には出さなかったけど。

ただ、あんなシャーベットみたいな雪に、はしゃぐ君がかわいかったので、捻くれものの私は軽口を叩いて。

たくさん泣いた夜があって、全部をぶつけるような喧嘩をした時もあって、なんなら感動的でロマンチックな夜もあったはずなのに。思い出すのは、いつだってくだらない事を話して笑っていた時ばかりなのです。

ファイナルファンタジーを寝ても起きてもずっとしてたな、とか。道端にいた子猫を抱いたらノミをもらっちゃって大変になったな、とか。シャリシャリの雪を踏んではしゃいでいたな、とか。

記憶は光に似ていて。星の光が届くのに時間がかかるように、記憶が濃くなるのにも時間がかかって。今、現在の私が想う過去の君は、永い時間をかけて辿り着いてくれた光のようなのです。