朝の少し冷たい空気と布団の中の肌温を行ったり来たりする瞬間が好きだ。眠たい目をこすりながら今日の一杯の珈琲を煎れる。あの人が豆を挽いて沸かす珈琲は美味しかった。なんでもない退屈な時間でもあの人と珈琲があれば幸せを感じることができたように思う。おいしいを連呼する僕を見ながらただ優しい瞳で微笑んでくれていましたね。

今では、独りで珈琲を沸かせるようになりました。君のいない時間はやはり退屈で、珈琲の味も昔ほど美味しくありません。朝のやわらかな光に照らされる君の美しい肌も、もう存在しません。そんなことわかってるのに、たまに当時の情景が浮かんでは、少し儚い気持ちになります。もしも運命というものがあるなら、あの二人の時間は確かに運命だったのでしょう。今では、本当にあなたが存在したのかさえもあやふやになりつつあります。

どこかの空の下で、あなたが存在するなら、言葉の雨を降らします。「君のいない生活と珈琲は味気ない毎日です」と

どうか幸せになっていてください。僕は一生分の幸せを君と共有しました。たとえ現実が味気ない日々だとしても、君の笑顔や、君の煎れた珈琲の味を忘れることはないでしょう。

どうか、お元気で。そして、その笑顔を誰かと分かち合えることができてますように。